オンデマンド講義 『地域資料から考える歴史と民俗』

阿部 宇洋 先生

皆さんの地域はどのようにして歴史が描かれたのでしょうか。もしくは残ってきたでしょうか。私たちは等しく故郷を持っているかと思います。その故郷を形成する1つの軸が歴史や民俗なのです。ただ、近年の社会変化によって私たちは知らない間に地域の資料となり得るモノを失っているかも知れません。

この講義は、その地域の歴史や民俗を形成する地域資料の在りかた、扱いかた、どのような視点で考える必要があるかなどを学生自らが主体的に考える事の出来るように練習する講義になっています。

講義の前半は、近世(江戸時代)以降の古文書を扱いながら基礎的なくずし字の調べ方などを中心に行なっています。オンデマンド講義(動画配信型)ですので、何度も繰り返し動画を見ることも可能で、繰り返してくずし字を学ぶ事が可能です。講義の中盤では、個人所蔵の資料や、資料館所蔵のアーカイブズ化された戦争資料をもとに、第二次世界大戦中の民衆記録に関して学びます。文字記録だけではなく、モノ、図像などの博物館では展示できないような資料をこの講義で扱っています。

後半は、一歩踏み込んだ専門性のある分野の紹介で、近世の旅を中心とした絵引きと、漂流と信仰に関して学びを深めてゆきます。信仰や祈願といった目には見えない、現代では非科学的だといわれそうな世界の捉え方などの考え方を学びます。

 その他に、学生には外部施設への見学を2回実施してもらっています。普段利用することのない施設や、小中学校での集団見学以来の施設など大学生になって改めて行ってみると新しい発見や問題点を見付けることが出来るでしょう。

基本はオンデマンド講義ですが、フィールドワーク的な要素も重要視しています。外部施設(博物館、図書館、公文書館など)を、自身で選択し、見学することで得た疑問や興味を最終レポートで発揮していただきます。講義で学んだことを活かしながら見学することは新しい視点が身についていると実感できるはずです。

好きな時間に、好きなだけ、視聴できるオンデマンド講義は、じっくり取り組みたい、繰り返し確認しながら取り組みたい学生には有効的な講義スタイルになっています。オンデマンドで学んだ知識を活用して見学する施設も知的好奇心を満たしてくれるはずです。

資料から当時の生活や思想を探る

人文社会科学部 人文社会科学科 グローバル・スタディーズコース

大宮 七海

この講義では、歴史や民俗の資料をもとに当時の時代背景を学んだり、その資料を読み解く方法などを広く学んだりすることができます。

私は元々柳田国男『遠野物語』の世界に興味があり、彼が研究していた民俗学とはどういう学問なのかを知るためにこの講義を受講しました。

この講義は大きく分けて三つの内容に分かれているので、それぞれを簡単に紹介していきたいと思います。

はじめに古文書の読解です。くずし字と呼ばれるものを、資料をもとに読解していきます。このくずし字の読解は難しいですが、パズルが好きな方にとってはある意味ゲーム感覚で楽しく読解することができるのではないでしょうか。また、古文書が発見された現場でその資料をどのように記録するか、取り扱うかということも学べます。

 次に戦争資料の読解です。日本の大戦中の過ちの数々やその資料の扱い方を学ぶことができます。皆さんの家の中にも歴史を裏付ける資料が眠っている可能性があるため、もしかしたら皆さんにも関係があるかもしれません。

 最後に民衆資料の読解です。民俗資料の例として、江戸時代に設置された高札という行政・商業において重要な役割を持つ立て看板について学べます。さらに日本が関係する漂流史も学ぶことができ、ここ山形県酒田市の港が関連した話も聞くことができます。

 また、この講義では実際に博物館や図書館に足を運び感想・改善点を考えて述べるという機会があります。今まで博物館や図書館に行くことがなかったという人も、教科書以外で直接資料を見学してその地域の歴史や民俗について理解を深めるチャンスです。私もこの機会に興味を持っていた遠野の民俗について調査を行い、教養を深めることができました。

 大学の講義の中でアクティブラーニングを行えるいい機会ですので、ぜひ受講してみてください。