毎朝授業に出ること、友人を作ること

千代 勝実 先生

ご入学おめでとうございます。

慣例では、山形大学での学びやみなさんのキャリアについてお話しするのですが、趣旨を曲げて、健全な学生生活を送るために必要なことを紹介したいと思います。本学の学生だけでなく、他大学の学生や保護者も是非参考にしてください。

大学では高校とは異なり、毎日みなさんを気にしてくれた担任の先生や、いつも同じ教室で横に座っていたクラスメイトがいるわけではありません。一人暮らしを始めるなら、毎日顔をあわせていた家族もいません。大学生になったというだけで、自分で生活管理をしなくてはなりません。大学生活を始めるにあたって、学業のほか最も意識を置いてほしいこと2点についてお話しします。

まず第一に、心身の健康に十分気をつけてください。長い時間の通学やはじめての一人暮らしなど環境や生活習慣が変わり、生活リズムや食生活が乱れたり、自分の不調に気が付きにくかったりします。心身ともに大人になるための最終段階で、これまで経験しなかったことが起こったり、その逆になくなったりします。

日常生活のペースメーカーとして、毎朝遅刻なく出席し、授業へ参加して課題提出やテストに臨むようにしてください。このペースを守っているだけで、生活や進級・卒業についての困難はまず生じません。山形大学で毎朝8時50分から1年生必修の授業がずらっと並んでいるのは、つい先日まで高校ではできていたはずの毎朝の登校が大学でできなくなったなど、何らかの不調や困難を抱えている学生を早期に発見し、不本意な休学や退学を避けるためです。

もう一つは、新しい友人や交友関係を作りましょう。もちろん対人関係が苦手な人もいるのは承知しています。それでも同じ学科や授業の中、授業外のサークルや趣味といったいろんなコミュニティに属して、自分のことを知ってくれて話ができるような友人関係を築きましょう。友人を気にかけたり、いろんな話をしたりすることは、みなさんの精神的な成長にとても重要です。授業や学生生活の情報のやり取り、困ったときの助け合いといった功利的なことだけではなく、利害や損得なしでつきあえる人間関係を気軽に作ることができるのは、大学時代が最後だからです。こういう理由で、多くの学生から、自分と違った関心を持つ友人を増やすために、自分の学科だけでなく他学部学科の学生とも強制的に協働作業ができる授業を増やしてほしいという意見がありました。そのため基盤共通教育ではそのような授業を数多く必修化しています。

授業に出たくないなあ、と思うことは誰でもあります。しかし、授業に出なくてもなんとかなるさ、何度か休んでしまったから今回はあきらめて次に履修しよう、しんどいとか気まずい、気が乗らないから出ない、などと欠席を選択してしまう、その時は心身になんらかの軽い不調を抱えていると考えてください。もし、こういう不調を自覚した場合、明らかな体調不良や精神的負担がある場合は迷わず病院を受診してください。もし自分では判断がつかない場合は、まずご家族や友人に話してみてください。「ちょっと朝起きられないんだよね」とか「全然やる気が出ないんだよね」とか、言葉にして他の人に聞いてもらうだけで、自分の状態を再確認することができます。また他の人にあなたの心身の状態について関心を持ってもらえます。言いにくいこともあると思いますが、話せる範囲でかまいません。逆に身近な人には話しにくいとか、人間関係や学業などで困ったことがあるので解決したいとか、自分の状況を具体的に把握したいのでアドバイスがほしいといった場合には、アドバイザー教員や学部の学務課や学生課、そして、障害学生支援センターで相談してみてください。センターは高校の頃の「保健室」「困りごと相談室」のようなイメージで気軽に頼れる場所です。

友人作りが苦手だなと感じていたり、友人が必要ないと思っている人もいると思います。ただ、大学での出会いは、人生でかけがえのないものになる可能性が高いです。たまたま隣り合った人とすぐに打ち解けて友人になるというのは、たいていの人にとってなかなか難しいものです。主体的に友人関係を作らなければといった考え方を変えて、友人関係やコミュニティを誰かに紹介してもらうこともできます。授業のグループワークやフィールドワークでアイスブレークのような雑談を交わしたり、サークルへの加入、インターンシップやアルバイトといった協働活動に参加したり、キャリアサポートセンターをはじめとする大学の組織、場合によっては興味のある研究室に行って教授と話し、興味のある分野について先輩と打ち解ける、ということもできるでしょう。とにかく組織的な枠組みを利用して、自己紹介や話をする機会を作ることです。大学生活4年間に、誰か知り合いがいる状態を維持しましょう。

規則正しく毎朝授業に出ること、新しい友人を作ること、みなさんの学生生活で最も重要なこと2点を紹介しました。1年生の4月はとても忙しくあっという間に時間が過ぎていますが、時々これらのことを思い出して実践するようにしてください。