音の体験と知識を結びつける

小倉 泰憲 先生

私たちの日常生活には,物がぶつかる音や音楽など,様々な「音」があふれています。「音」は生活に密着しているので特別に学ばなくても皆いろんなことを話せます。したがって「音」というものは何ら難しいものだとは思われない事も多いようです。しかし,「音」に関わる現象を科学的な立場から話そうとすると少し事情が変わってきます。たとえば「澄んだ音」とか「歪んだ音」という言い方をすることがあります。では「澄む」とか「歪む」とは科学的にはどういう事なのかというと,正確に言える人は少なくなります。

「そんな事知らなくても困らない」と思う人もいるかもしれません。しかし,楽器を演奏しようとした場合,「澄んだ音」を出したくなることもあるでしょう。その時,数多くの練習をし,カンと経験で習得するというやり方もあるでしょうが,科学的な知識が近道をもたらす場合もあります。また,良い音のオーディオ装置がほしいと思った時,「値段が高ければ良い音が出るに違いない」と考える人もいると思います。これはある程度正しいのですが,合理的な判断と自己満足の区別がつかないままだと思います。それよりも「歪み」が発生するメカニズムを知っていると,原理的に「歪み」が少ない装置かどうかを判断できるようになります。

このように,私たちの身の回りにある「音」の話題や体験と科学的な知識とを結びつけることは大事です。この授業のねらいはここにあります。このために,とても低い音や,超音波を含むような高い音を出す専用の装置を用意しました。これを用いた体験的な授業は,理系とか文系という区別に関係無く,多くの学生に刺激を与えているようです。

身近な「音」を深く知ってみよう

地域教育文化学部

大木 幸菜

この講義に関して、一見物理学ということで難しそうな印象があるかもしれません。しかし、「文系、物理の知識は中学まで」の私でも、毎週楽しく参加できたのでご安心ください。ここからは、特にこんな人にオススメ!という視点で紹介していこうと思います。

  1. 音楽を聴くことが好きな人、様々な国や種類の音楽に触れてみたい人。
  2. 講義の中では、様々な技術や工夫を、実際に音楽を聴きながら学んでいきます。最近の洋楽やJPOPミュージックから、民族音楽やクラシック、さらにはアニメソングやVOCALOIDの音楽まで扱います。様々な音楽を通して、新しいことを知っていくのが面白かったです!

  3. 自分で「音楽をする」ことが好きな人、今まで音楽をやってきた人。
  4. 趣味や部活などで音楽に関わったことがあり、少しでも知識があるという人にとって、この講義はとても興味深い内容になっていると思います。私は高校で合唱をしていました。そのため、「音程」や「会場の響きやすさ」について、科学の視点から考えていくのが新鮮でした!

  5. いろいろなものの仕組みに興味がある人。
  6. 「私たちはどうやって音を感じているのだろう?」「年をとると耳が遠くなるのはなぜ?」「スピーカーってどんな仕組みなんだろう?」この講義では、そんな疑問を人間の耳や物の構造という点から解き明かしていきます。

どうでしょうか?三つのうち、どれか一つでも当てはまる人なら、きっと楽しく受けられる講義だと思います。『音の科学』は全く知らない世界に触れる、というよりも、いつも自分たちの周りにあるものに一歩踏み込んで考えていく講義です。日常にある「音を聴くこと」や「音楽」への解析度がぐっと上がり、物事の捉え方が変わります!是非、体験してみてください。

さいごに、教養科目の講義は自分の好きなことや興味のある分野を、専攻せずとも専門の先生から学べるチャンスです。じっくり考え、自分に合った講義を選択できれば、一年生の基盤教育で学ぶ時間がとても有意義なものになると思います。

それでは、良いキャンパスライフをお送りください。