なぜ学ぶのか 何を学ぶのか

吉田 浩司 先生

日本経済が低迷期を迎えて久しく、なぜ学ぶのか、何を学ぶのかがしばしば世間の話題に上るようになりました。その一つ一つへの個人的な感想は控えますが、私の乏しい人生経験から云えることがあるとすれば、それは「教養はにじみ出てくるものであって、ひけらかすものではない」ということでしょうか。

人柄といったものは、その人の知性や教養とは不可分のものであって、その人の持っている専門性やさまざまな体験が、その人となりに奥行きを与えてくれているように思います。「スキル」とか「リテラシー」という言葉が流行の昨今ですが、ビジネスや学術などのシーンで、薄っぺらな言葉やプレゼンテーションしか披露できずに簡単にメッキが剥がれてしまっている人を見かけると、やはり残念な気持ちにさせられます。

大学に入学されたばかりの皆さんには実感に乏しいかもしれませんが、「いまようやく学びのスタートラインに立ったところなのですよ」ということは強調しておきたく思います。

大学を卒業した後は、ビジネス、技術、学術、教育、医療、福祉、芸能…など、さまざまな分野で優秀なプレーヤーになることが、皆さんには期待されているようです。しかし、これまでの学生時代と違うのは、才覚ややりようによっては、自分で土俵とルールを設定し、ゲームを作る側にまわることも可能だということです。

ただし独りよがりでは世界中の人々を惹きつけて自分のゲームに参加させることはできません。文化の違いへの理解と共感、人間への深い洞察、科学技術へのタイムリーなキャッチアップといったことが必要不可欠です。いわゆるグローバル化、リーダーシップ、イノベーションとはそういうことなのだろうというのが私の理解です。

大学生活を大いに楽しんで素敵な人になってください。