現代社会を支える数学としての「線形代数」

原 一夫 先生

授業「線形代数I」では、高校で習う「平面ベクトル、空間ベクトル」を復習してから、「行列」について学びます。

たとえば、連立一次方程式は、ベクトル X、ベクトル B、行列 A を用いて、

A X = B

のように表現できること、そして、連立一次方程式の解が存在するかどうかは、行列式(determinant)で判定できること、を学びます。具体的には、中学校や高校で習う

a x = b

という方程式では、もしも a = 0 なら、解は存在しない、もしくは、解は一意に定まりません。なぜなら、まず、b ≠ 0 の場合は、0 x = bを満たす x は存在しません。そして、b = 0 の場合は、0 x = 0を満たす x は無数に存在します(x がどんな値であっても、0 x = 0 は成立します)。同様に、

A X = B

と表される連立一次方程式では、もしも行列 A の行列式の値がゼロなら、解は存在しない、もしくは、解は一意に定まらないことがわかります。

授業「線形代数I」は前期に行われますが、後期の「線形代数II」では、高校で習う関数

y = f (x)

を発展させて、行列 A を用いてベクトル X をベクトル Y に写像する線形関数

Y = A X

の話へと展開されていきます。

最近、社会で広く注目されているAI(人工知能)は、Y = A X のようなベクトルと行列の演算を駆使して、データ(画像、テキスト、音声など)を分類、生成します。線形代数は、現代社会を支える数学となっています。

なお、写真に示しましたように、2020年度の「線形代数I」は、COVID-19対応のため、研究室からリアルタイムでオンライン授業を行いました。チャットによる質問が活発になると、授業は楽しいです。

データサイエンスってなんだろう?

理学部理学科 3年

田口 恵里

「データサイエンス」という名前を聞いて、どのような授業内容なのか容易に想像がつきますか?おそらくほとんどの人ははっきりと答えられないのではないかと思います。私自身も全く想像がつかず、講義を受けてみるまではとても不安だった覚えがあります。実際に講義を受けてみると全く印象が大きく変わりました。

まず、この講義は、データサイエンスカリキュラムを担当する複数の教授によってオムニバス形式で進められます。講義毎に先生と内容が変わるので、データサイエンスに対する様々な見方をした講義を受けることができます。そんなわけで全ての講義を異なる形式で毎回楽しむことができました。また、講義の内容には誰もが知っているような事例が取り上げられ、それをもとに進められます。そのおかげで、理解するのが難しいような現象もとても身近に感じることができました。特によく覚えているのは、ベニちゃんバスのシステムの例にしていた内容とQRコードを自分たちで作った内容です。さらに、複数回の講義では、講義中の課題を学生だけで助け合いながらこなしていくことも奨励されていました。先生の説明で理解できた学生は周囲の人に教えることでより理解を深め、わからなかった学生は周囲の人に気軽に質問することができました。

このように、データサイエンスⅠの講義は親しみやすい形で受けることができます。もしも「データサイエンス」という少し親しみづらい科目名のせいでこの講義を受けることに抵抗があると感じている人がいるのであれば、そんな人が履修登録をする際に一歩を踏み出すための足掛かりになれればと思います。