スポーツ・セミナー「運動の原理を探る」

竹田 隆一 先生

今年度より、新たに開講した授業である。元来、スポーツ・セミナーは、スポーツ理論と実技を融合した授業である。実技に関連した理論というと「技術」ということがはじめに思い浮かぶ。「技術」とは、運動課題に対する合目的的で経済的な身体の動かし方であるが、技術は運動形態を数量化し、トップ・アスリートと初心者を比較することによって、理解しようとするのが一般的である。

しかし、本講義では、適切な技術について、何故、そのような運動形態をとるのか、あるいはとらなければいけないのか。ということについて物理学的理論によって理解することを目的としている。じつは、スポーツ科学において、物理学的究明は十分になされているとはいえないのが現実である。物理学的理論は、山口大学の坂井先生にSKYPEで講義していただいている。実技については、「剣道の面打ち」運動を取り上げている。不自然で、複雑な運動である。坂井先生の物理学的理論を学習し、それを元とし、「面打ち」運動を練習しながら、その習熟過程で物理学的理論を学んでほしいと思っている。人間の運動は、理論だけでは習得できない。しかし、理論の理解は、技術習得には有意義である。このような技術学習の困難と面白さと深さを経験してもらいたい。

物理学に基づいたスポーツ指導

地域教育文化学部地域教育文化学科 4年

逸見 和永

私は幼い頃から剣道に励んできました。しかし,人に技術を伝えることは不得意で長年の課題でもありました。そこで,この「スポーツ運動の原理を探る」という講義を受けることで,その課題を克服する手がかりをつかめるのではないかと考え,また私自身の卒業研究のテーマにも密接にかかわってくる授業内容であったことから履修しました。

講義はSkypeを用いて山口大学の坂井伸之教授から物理学的な視点で動作の原理を学び,それを踏まえて後半は竹田隆一教授の指導で剣道の練習法として実際にやってみる,という流れで進められました。

現在,スポーツに関する研究は,実験で運動形態の速度や力の大きさを測ることはあっても,その動きがなぜ正しいのかを解明するものは少ないため,うまく指導に結びついていないと学びました。この講義を受けたことにより,自分がこれまで当たり前のようにやってきた練習法や,指導されてきたことの理由を,物理学的な“法則”に照らし合わせることで再認することが出来ました。

また,法則を基に考案された剣道の面打ちの練習は,スポ少や部活で教わるような一般的な練習とは一線を画したアプローチでしたが,非常に効率よく初心者が正しい動きを体得していました。私もこれから剣道を指導する機会があれば,この経験をもとに技術を教えていければ,と思います。

この授業では剣道だけでなく様々なスポーツに応用できる理論を学びます。特にスポーツの指導に関わろうとしている新入生の方には是非履修して頂ければと思います。