将来のその時に向けて

飯島 隆広 先生

新入生の皆さんが生まれた頃の2004年,その年のNHK大河ドラマは,幕末の動乱下の江戸や京を舞台とした「新選組!」でした。本ドラマは,近藤勇や土方歳三らの若者が新選組を結成し,京の治安維持部隊として活躍するもその後,儚く散っていく様を描いた青春群像劇です。

この作品の中で,松代藩士の佐久間象山という学者・思想家が登場します。新選組結成のかなり前,多摩の田舎でくすぶっていた二十歳前の近藤と土方に,象山先生は次のような話をします。

「人は,生まれてから最初の十年は己のことだけを考えればよい。そして,次の十年は家族のことを考える。二十歳になってからの十年は生まれた国のことを考える。そして,三十になったら日本のことを考える。四十になったら世界のことを考える」

教育課程が整備され,また,インターネットを含む多様なメディアから必要な情報を得ることができる現代では状況が異なりますが,年齢とともに視野を広げていくべきという考え方は,現代にも当てはまることでしょう。

象山先生は続けます。

「今は多摩の田舎のことだけ考えればよろしい。ただし,十年後,日本のことを考えねばならなくなった時に正しい判断ができるよう,今から勉強しておくのだ」

良い言葉ですね。近藤と土方も目を輝かせます。

皆さんがこれから始める大学での学びも,これに近いものがあります。大学卒業後に,あるいは大学院修了後に,物事に対して適切な判断を行い,社会を担う人物として活躍できるよう,今ここでしっかり学ぶのです。

山形大学での学びの第一歩が基盤共通教育です。基盤共通教育では,大学以降の学びの土台をつくる導入科目や幅広い教養を身につける教養科目など,多種多様な授業科目を用意しています。将来の自己実現に向け,皆さんが本学で生き生きと学び,日々成長することを願っています。