オンデマンド講義 『地域資料でみる中近世日本』〜 古人の「声」を聞くこと

石黒 志保 先生

山形大学に通う皆さんは、県外からの方も多いのではないでしょうか。また県内から通学している方も、地域の歴史について調べたこと、あるでしょうか。歴史学は年号や事件を知ること、このように捉えている方が多いかも知れません。確かに世界や日本の成り立ちを知ることは、大事なことです。しかし私たちが今暮らすこの営みがあるように、100年前も1000年前もここで暮らす人々はいました、当たり前ですが。その人たちが何を考え、どのように生きたのかを知ることも、この地域に暮らす私たちにとって大事なことだと思います。

教養科目「地域資料でみる中近世日本」では、山形の地域史料を使い、そこで生きた人の「声」を聞くことをテーマとしています。今はスマートフォン、ビデオカメラなどの機材を使い、デジタルデータで声や動作を残すことができます。少し前はCD、VHS、カセットテープ、レコードもありました。ではそれらがなかった時代の「声」は、聞くことができないのでしょうか。歴史資料の多くは紙や木に記されたもの、それらは文献資料と言いますが、文字で書き残されています。文字で記された「声」、たとえば歌には古人の思いが詠み込まれています。

山林連夜雪 処々積成堆 纔喜曙光動 乗晴間野梅    (『鶴城四時歌』)

これは江戸時代中期の米沢の僧侶であったしゃくだいこうが残した漢詩です。連夜の雪で、真っ白に層を成す米沢の山々。夜明けの光が雪間からわずかに差しこむ、その間に春の兆しの野梅を探すという歌ですが、春の訪れを待ちわびる気持ちは今の私たちにも通じる思いです。

 授業では山形の地域史料を扱いますが、ぜひ自分の地元や興味ある地域の史料を探してみてください。そこに見える古人の姿は、私たちと同じでしょうか、違うでしょうか。ぜひ一緒に考えてみましょう。

歴史を学ぶのも良いものですよ

理学部 理学科

萩原 一翔

この授業科目では、地域の歴史を学ぶ楽しさを知ることができます。

授業では製本や米沢の歴史、日本の歴史など史料と歴史に関することを幅広く先生にご教授していただけます。私はあまり歴史に対する知識はありませんでしたが、授業を受講すると誰もが興味を惹く内容で驚かされます。授業の内容では、米沢の歴史を史料で辿っていくと沖縄にまでルーツがあり、その名残が現在の米沢市と沖縄市の姉妹都市の提携として残っているということには大変驚きました。

このように歴史が過去にとどまらず、現在にまで繋がっていることを知り、歴史を肌で感じることができる点がこの授業の一番の面白みだと思います。

また授業を通して図書館を活用することができるようになります。授業では図書館のしくみや利用方法についても扱ってくださるので、私自身、授業内容で気になることがあったら図書館へ気軽に足を運ぶようになりました。

 図書館へ足を運ぶことは学部を問わずレポート作成などで重要なことです。しかし、その図書館の活用方法を教えていただける授業は他にはないので、歴史を学びつつ図書館も有効活用できるようになるのはこの授業の利点です。

 最後に新入生の皆さんにはぜひこの授業を受講していただきたいと思います。大学生時代は人生で勉学に打ち込める最後の貴重な時間になるかもしれません。そのため特に歴史への興味が薄い人ほど、身近な歴史や史料に目を当てて一度全力で勉強するのは大学生時代の良い思い出になると思います。皆さん大学頑張ってください。